みなさんこんにちは。
Graging Toolsです。
このブログでは、革製品の魅力や、お手入れの仕方などのお役立ち情報をご紹介しています。
今回は、革製品につきものの金属パーツ、ファスナーについて。
「ファスナー」、あるいは「ジッパー」「チャック」と呼び名が色々ありますが、実はどれも同じ金具を指しています。
では、一体何が違うのでしょう?
早速、ファスナー雑学とともに、ファスナーの簡単お手入れ方法をお伝えします。
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みなさんは、ファスナーのことを普段なんと呼んでいるでしょうか。
「ファスナー」が一般的ですが、デニムなどでは「ジッパー」、袋についていたりすると「チャック」と呼んだりしますよね。
でも、それらの名前が指すのはただ一つ。
何度でも自在に開け閉めのできる金具のことです。
ではなぜ色々な呼び方があるのか。
まずはファスナーの由来からみていきましょう。
英語でファスナー(Fastener)には「しっかり留めるもの」という意味があります。
よく「Fasten your seatbelt =シートベルトをお閉めください」という文字を飛行機の機内で見かけたりしますよね。
言葉の意味から、衣類などについている金具をファスナーと呼ぶようになりました。
そもそもファスナーは、1891年にアメリカのホイットコム・ジャドソン氏が、靴ヒモを結ぶ不便さを解決しようと考えだしたものが起源とされています。
しかし、当時はまだ「使っているうちにファスナーが開く」などの不具合が多く、一般的に普及しませんでした。
その後、1921年にアメリカのシューズメーカーが、初期のファスナーを改良し、靴につけて発表しました。
その際、金具を閉める時になる「ジッジッ」という擬音を「Zip」と呼び、そこから連想して「ジッパー(Zipper)」と命名したのです。
この「ジッパー」付きの靴が好評を博し、アメリカではファスナーのことを「ジッパー」と呼ぶことが多くなります。
アメリカでは「ジッパー」と呼ばれるようになった金具。
日本では1927年に広島県尾道市のメーカーが、「巾着(きんちゃく)」からもじって、ファスナーを「チャック印」として製作・販売しました。
これが評判になり「チャック印」は商標登録され、略して「チャック」という呼び名が定着したのです。
つまり、「チャック」は日本国内だけでの愛称。
英語圏では「ファスナー」か「ジッパー」が呼び名です。
アメリカでは「ジッパー」、日本では「チャック」と呼ばれる「ファスナー」。
英語圏以外ではなんと呼ばれているのでしょうか?
例えば、フランス語では「フェルメチュール・ア・グリシェール」と呼ばれています。
メキシコなど中米諸国では「稲妻」を表す「シェレス・レランパゴス」、中国語圏では「ラーリェン」と呼ぶそうです。
私たちの生活の身近な存在となった「ファスナー」。
「ジッパー」や「チャック」だけでなく、世界には色々な呼び方があって、その国ごとに根付いているようですね。
様々な呼び名を持つ「ファスナー」ですから、世界各地にはそれぞれ有名なファスナーメーカーが存在します。
その一部をご紹介しましょう。
日本が世界に誇るファスナーメーカーの最大手YKK。
1934年に創業した「吉田工業株式会社」の頭文字をとって「YKK」とし、これをファスナーの商標名にしました。
耐久性・品質共に高く、世界中で親しまれているYKKのファスナー。
世界シェアは45%とTOPを閉めています。
ちなみに、Graging Toolsの革製品に使っているのもYKKのファスナーです。
TALON(タロン)は、世界で初めてファスナーを製作したアメリカのメーカー。
ファスナーの製造方法の礎を確立しました。
残念ながら1991年に倒産し、現在TALONのファスナーは製造されていませんが、多くのファスナーメーカーがその製法・製造規格を取り入れています。
今ではヴィンテージのレザージャケットなどで目にすることができますよ。
1936年にニューヨークで創業したファスナーメーカーIDEAL (アイディール)。
世界シェアはYKKに次ぐ第2位の大手です。
現代のニーズに応えるべく様々なタイプのファスナーを開発する一方で、アンティーク風の商品に合うヴィンテージテイストのファスナーの伝統も大切にしているメーカーです。
1939年以降は、米軍にもファスナーを提供し続けています。
RIRI(リリ)は1936年にスイスで創業したファスナーメーカー。
独特なデザインとメタリックな輝きで、ファッションブランドに多く採用されているファスナーメーカーです。
デザイン性だけでなく強度にも優れ、金属の歯の部分が他のファスナーメーカーより少し硬めなのが特徴です。
RAMPO(ランポ)は、1887年、イタリアで創業しました。
「世界一美しいファスナー」との呼び声があり、CHANELやDOLCE&GABBANAなど、有名なハイブランドの多くがRAMPOのファスナーを採用しています。
デザイン性が高く、高級ファスナーブランドの地位を確立しています。
さて、最後は簡単なファスナーのお手入れ方法をご紹介します。
ファスナーは汚れが溜まる、あるいは長時間放置していると、ムシ(務歯)の噛み合わせが悪くなり、硬くなってしまうことがあります。
そんな時は、ほんの少しメンテナンスすることで引っかかりをスムーズにすることができますよ。
用意するのは
・ブラシ
・ロウソク、または金属用などの潤滑オイル
・乾いた布
1, まずは、ブラシでファスナーについた汚れや埃を取り除きます。
ブラシは馬下ブラシがベストですが、なければ歯ブラシなどでOKです。
2, ファスナーのムシの部分にロウソクをあて、全体に薄く、優しく滑らすような感じで塗っていきます。
(この時強くガリガリやるとロウが削れて粉が出てくるので注意して下さい)
金属の劣化等による引っかかりの場合は、金属用の潤滑オイルを少しずつ塗ります。
潤滑オイルは、スプレータイプよりペンタイプのものの方が作業しやすいですよ。
3, 仕上げに乾いた布で余分なロウやオイルを拭き取れば終了です。
ご紹介したのはご家庭でできる応急処置的なお手入れ方法です。
自身でやるのが不安、引っかかりが強くファスナーが動かないなどの場合は、無理に引っ張らず、販売店や修理専門店にお願いしてみてください。
革製品に多く使われているファスナー、開発されてから早1世紀以上が経ちました。
私たちに一番馴染み深いのはやはりYKKのファスナーでしょうか。
今や、金属のファスナーだけでなく、樹脂のファスナーも存在し、その種類は10万種以上もあるそうですよ。さすが世界シェア1位ですね。
ファスナーは定期的にお手入れすることで革製品同様、長く使えるアイテムです。
ぜひ革製品のケアをするときにもう一手間、ファスナーの滑りも良くしておくことをオススメします。